納豆を食べていて、ふと思い出したことがあります。
「日本の納豆菌って、確か3種類だったような……?」
昔どこかで聞いた記憶があるんです。
宮城野菌、高橋菌、成瀬菌。
でも、スーパーを見ると納豆は何十種類もあります。
「じゃあ、この納豆たちは全部3種類のどれか?」
「メーカーによって菌が違う?」
「菌が違えば、味だけじゃなく健康効果も変わるの?」
さらに私が気になったのが、昔ながらの経木(きょうぎ)に包まれた納豆。
最近は発泡スチロールのパックがほとんどですが、経木納豆を見るとつい手が伸びます。
そこで今回は、ずっと頭の片隅にあった
「日本の納豆菌は本当に3種類なのか?」
という疑問から、納豆菌について真剣に調べてみました。
調べてみると、私の記憶は半分正解、半分違っていました。
結論|日本の納豆菌は「3種類しかない」わけではなかった
最初に結論です。
日本の納豆菌が、
- 宮城野菌(宮城野株)
- 高橋菌(高橋株)
- 成瀬菌(成瀬株)
の3種類しか存在しないわけではありません。
この3つは、長年日本の納豆製造で使われてきた代表的な「三大納豆種菌」と考えるのがわかりやすいです。
現在でも多くの納豆メーカーが、この3系統のいずれかの納豆菌を使っています。
一方で、大手メーカーなどでは商品に特徴を出すため、独自に選抜・開発した納豆菌も使われています。
つまり、
「納豆菌=3種類」ではなく、昔から広く使われてきた代表格が3つある
ということ。
私が昔聞いた「日本には納豆菌が3種類」という話は、おそらくこの三大納豆菌のことだったようです。
そもそも「納豆菌」って何?
納豆菌という名前だけ聞くと、納豆にしか存在しない特殊な菌のように思えます。
ところが分類上は、納豆菌は枯草菌(Bacillus subtilis)の仲間です。
枯草菌は土や植物など自然界に広く存在する菌。
その中でも、大豆を発酵させて
- 納豆特有の糸を作る
- 香りを作る
- うま味を生み出す
といった、納豆作りに適した性質を持つ菌株が「納豆菌」として利用されてきました。
昔ながらの藁納豆ができたのも、稲藁に枯草菌の仲間が存在していたためです。
ただし、現在市販されている納豆の多くは、
「藁についていた菌に偶然発酵してもらう」
という作り方ではありません。
純粋培養された納豆菌を蒸した大豆に接種し、温度や湿度を管理して発酵させます。
つまり、現代の納豆はかなり計算された発酵食品なんですね。
日本の「三大納豆菌」とは?
では、昔から使われてきた3つの菌を見ていきます。
宮城野菌(宮城野株)
まずは宮城野菌。
宮城県仙台市にある「宮城野納豆製造所」と関係の深い納豆菌です。
創業者の三浦二郎氏が稲藁から採取・培養した納豆菌が受け継がれ、現在も種菌として使われています。
宮城野納豆製造所によると、宮城野株で作った納豆は
昔ながらの強い糸引きと味わい
が特徴とのこと。
「ザ・納豆」と呼びたくなるような、昔ながらの納豆らしさを感じやすいタイプといえそうです。
そして個人的に気になったのが、宮城野納豆製造所では現在も経木入りの宮城野納豆を販売していること。
しかも「しなの木」の経木を使った商品があります。
これはぜひ実際に食べてみたい。
経木と宮城野菌の組み合わせについては、別の記事で改めて検証する予定です。
高橋菌(高橋株)
次が高橋菌。
山形県の「髙橋祐蔵研究所」が長年扱っている納豆菌です。
現在も納豆製造用の種菌として販売されています。
高橋株について調べると、発酵だけでなく、
- 耐熱性
- 耐酸性
- ビタミンK2(MK-7)の産生
- タンパク質分解酵素
などについて研究されていることがわかります。
ここだけ見ると、
「健康目的なら高橋菌が一番いいのでは?」
と思ってしまいますよね。
私も最初そう思いました。
ただし、ここは注意が必要。
研究されていることと、
「高橋菌で作った納豆を食べれば、宮城野菌や成瀬菌より健康効果が高い」
ということは別です。
三大納豆菌を人が同じ条件で食べ続けて、健康効果を直接比較した研究が十分そろっているわけではありません。
「高橋菌が最強」とまでは言えない、というのが現時点では妥当でしょう。
成瀬菌(成瀬株)
3つ目が成瀬菌。
成瀬菌で作った納豆を現在も明確に表示して販売しているメーカーのひとつが、岩手県花巻市の「大内商店」です。
同社の「花巻納豆」には、伝統の成瀬菌が使われています。
大内商店によると、成瀬菌を使った納豆は、
- 納豆特有の強い臭いが比較的少ない
- 白っぽく仕上がる
- 糸引きが強い
という特徴があるそうです。
これはかなり興味深い。
納豆菌が違うだけでも、香りや見た目、糸の状態まで変わるということです。
「納豆なんて豆の種類で味が決まるんじゃないの?」
と思っていましたが、どうやら菌もかなり重要なようです。
3種類の違いを簡単にまとめると?
現時点で確認できた特徴を整理すると、こんなイメージです。
| 納豆菌 | 特徴 |
|---|---|
| 宮城野菌 | 昔ながらの強い糸引きと納豆らしい味わい |
| 高橋菌 | 発酵力や酵素、ビタミンK2産生などについて研究されている |
| 成瀬菌 | 臭いが比較的穏やかで白く仕上がり、糸引きが強い |
ただし、この表にはひとつ注意点があります。
納豆の味は菌だけで決まりません。
使用する大豆、
- 品種
- 粒の大きさ
- 水分
- 蒸し方
- 発酵温度
- 発酵時間
- 熟成
- 容器
などでも変わります。
そのため、
「宮城野菌なら必ずこの味」
と単純には決められません。
それでも同じ大豆・似た製法で比較できれば、菌による違いがどこまで出るのかは非常に気になるところです。
納豆菌によって健康効果も違う?
そして一番気になったのがここ。
菌が違えば、健康効果も違うのでしょうか?
納豆には発酵によって作られる、あるいは増える成分があります。
代表的なものとしてよく知られているのが、
- ビタミンK2(特にMK-7)
- ナットウキナーゼ
- ポリγ-グルタミン酸(納豆のネバネバ成分)
- アミノ酸などのうま味成分
です。
研究では、使用する菌株によってビタミンK類などの産生量が異なることも確認されています。
つまり、
「どの納豆菌を使うかによって、出来上がる納豆の成分がまったく同じとは限らない」
ということ。
これは面白いところです。
では「三大納豆菌で一番健康にいい菌」は?
ここまで読むと、
「結局どの菌を選べばいいの?」
となりますよね。
ですが調べた限り、
宮城野菌・高橋菌・成瀬菌のどれが健康面で一番優れているかを決められるだけの、人を対象とした比較データは見つかりませんでした。
三大菌のいずれで作った市販納豆からも、ナットウキナーゼ活性が確認された研究があります。
一方、ビタミンK2などについては菌株による産生量の違いが報告されています。
つまり、
菌株による「差」はある。
でも、
その差が、そのまま「食べた人への健康効果の優劣」になるとはまだ言えない。
ここは分けて考えた方がよさそうです。
「○○菌だから腸に一番いい」
「○○菌なら血液サラサラ効果が一番高い」
などと簡単に決めるのは、現時点では少し早いと感じました。
ナットウキナーゼ目的なら注意したいこと
納豆というと「ナットウキナーゼ=血液サラサラ」というイメージもあります。
ただし、食品の効果を医薬品のように考えるのは注意が必要です。
また、納豆にはビタミンKが多く含まれるため、ワルファリンなど一部の抗凝固薬を服用している人は納豆を避けるよう指示されることがあります。
治療中・服薬中の場合は、「健康に良さそうだから」と自己判断で量を増やすのではなく、医師や薬剤師の指示を優先してください。
スーパーの納豆を見ても、何菌かわからない理由
ここで新しい疑問が出てきました。
「じゃあ、いつも買っている納豆は何菌?」
ところが、パッケージを見ても通常は
「納豆菌」
としか書かれていません。
宮城野菌、高橋菌、成瀬菌……とは書かれていないことがほとんど。
しかも現在は三大種菌だけではなく、メーカー独自の納豆菌もあります。
つまり、原材料表示だけを見ても、
どの菌株で作られた納豆なのか判断できない商品が多い
ということです。
これは今回調べていて一番もどかしかったところです。
実際に「何菌かわかる納豆」はある?
あります。
代表的な商品として確認できたのがこちら。
宮城野菌|宮城野納豆
宮城野納豆製造所では、自社の納豆が**日本三大納豆菌のひとつ「宮城野株」**で作られていることを明記しています。
さらに経木入りの商品もあります。
これは私の
「昔ながらの納豆+菌までわかるものを食べたい」
という条件にかなり近い商品です。
>>公式の宮城野納豆製造所 オンラインショップ
楽天やAmazonには手作り用の納豆菌が用意されています
成瀬菌|花巻納豆
岩手県花巻市の大内商店では、伝統の成瀬菌を使用していることを公式に明記しています。
こちらも、菌の違いを確かめたい人にはわかりやすい商品です。
高橋菌|納豆用の種菌は現在も販売
髙橋祐蔵研究所では現在も高橋株の納豆菌を販売しています。
一方、市販の完成品納豆になると、菌株をはっきり表示している商品は宮城野納豆や花巻納豆ほど簡単には見つかりませんでした。
このあたりも、今後もう少し掘り下げたいところです。
私が本当に気になっているのは「経木納豆」
今回「納豆菌は3種類だったっけ?」という疑問から調べ始めましたが、もうひとつ気になっていることがあります。
それが経木納豆。
今のスーパーでは、発泡スチロール容器に入った納豆が圧倒的に多いですよね。
もちろん衛生面や大量生産、輸送を考えれば、とても合理的な容器だと思います。
でも、昔ながらの経木に包まれた納豆には独特の魅力があります。
実際に調べてみると、
- 宮城野納豆
- 下仁田納豆
- せんだい屋の経木納豆
など、現在も経木を使っている商品があります。
ただし、ここにも面白い違いがありました。
経木を使っている=自然に付着した菌だけで発酵している
という意味ではありません。
現代の経木納豆でも、基本的には選ばれた納豆菌を大豆に接種して発酵させています。
では、
経木と発泡スチロールでは本当に味が変わるのか?
木の香り?
水分?
発酵状態?
それとも単なる雰囲気?
ここはネット情報だけではなく、実際に食べ比べてみたいと思っています。
結論|「納豆菌は3種類」は間違いではないけれど少し違った
今回調べてみて、長年ぼんやり記憶していた
「日本には納豆菌が3種類ある」
という話の意味がようやくわかりました。
正確には、
日本の納豆菌が3種類しか存在するわけではなく、昔から広く使われてきた代表的な三大納豆種菌がある。
それが、
宮城野菌・高橋菌・成瀬菌。
そして、使用する菌によって
- 糸引き
- 香り
- 色
- 発酵状態
- 生成される成分
などに違いが出る可能性があります。
ただし健康効果については、
「この菌が一番体にいい」と決められる段階ではない
というのが今回の結論です。
それより私が興味を持ったのは、
同じ納豆でも「何の豆を使うか」だけではなく、「何の菌で発酵させたか」という世界があること。
今まで納豆を買うとき、国産大豆かどうかは見ても「菌」まで気にしたことはありませんでした。
これはちょっと食べ比べたくなります。
次は、
「経木納豆と発泡スチロール納豆は本当に違うのか?」
そして最終的には、
宮城野菌・高橋菌・成瀬菌を、できるだけ条件を揃えてタレなしで食べ比べてみたい
と思っています。
納豆の世界、思っていたよりかなり深そうです。
※この記事は、メーカー公式情報および発酵・納豆菌に関する研究資料をもとに調査しています。食品による健康への影響には個人差があります。治療中・服薬中の方は医師・薬剤師の指示を優先してください。
参考にした主な資料
- 日本醸造協会誌「納豆菌と枯草菌の共通点と違い」
- 生物工学会誌「皆で語ろう,納豆よもやま話」
- 宮城野納豆製造所 公式サイト
- 有限会社大内商店「花巻納豆」公式サイト
- 有限会社髙橋祐蔵研究所 公式サイト
- 日本農芸化学会誌「オカラ発酵による水溶性ビタミンKの生産」
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